研究概要 |
ラン藻Anabaena variabilisのゲノムDNAをλEMBL4に組み込んだ遺伝子ライブラリを作製し,differential screeningにより,低温で発現が誘導される遺伝子を単離した。スクリ-ニングでは,38℃の一定温度で生育した細胞および22℃にシフト後2.5時間の細胞のそれぞれから得たRNAを鋳型としてPー32ラベル一本鎖cDNAを合成してプロ-ブとし,38℃プロ-ブとはほとんど反応せず,22℃プロ-ブとは強く反応するクロ-ンを選択した。さらに,得られたクロ-ンDNAをプロ-ブとしてノ-ザンブロットを行い,低温シフトによる発現誘導を確認し,現在までに2個のクロ-ン(Lti2,Lti46)が得られた。各クロ-ンには遺伝子の一部しか含まれいてなかったので,さらにこれらのクロ-ンDNAをプロ-ブとしてスクリ-ニングを行い,遺伝子の残りの部分を含むクロ-ンを得,最終的にはそれぞれの遺伝子全体を含むクロ-ンを再構築した。それぞれのクロ-ンについて塩基配列を調べ,さらにSl法により転写領域を確定した。Lti2の転写産物は2.0kntで,これには552個のアミノ酸残基からなるORFが含まれており,これはαアミラ-ゼと類似のアミノ酸配列をもっていた。Lti46の転写産物には0.7knt,1.6knt,2.5kntの3つの大きさのものがあり,2.5kntのものは0.7kntと1.6kntのものおよび中間領域を含む転写産物であった。0.7knt転写産物には120個のアミノ酸残基からなるORF1が,1.6knt転写産物には180アミノ酸残基からなるORF2と215アミノ酸残基からなるORF3がそれぞれ含まれていたが,どのORFも既知タンパクのアミノ酸配列との著しい相同性はなかった。両遺伝子の各転写産物の量は38℃では微量であり,22℃へのシフト後1時間で約10倍になったが,その後次第に低下するという,一過性の発現を示した。今後,キメラ遺伝子を作製して,発現調節をさらに詳しく研究してゆくことにする。
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