研究概要 |
ラン藻Anabaena variabilis M3のゲノムDNAから昨年度の研究において単離された低温誘導性遺伝子lti2,lti46について、遺伝子産物の解析と低温による発現制御を検討した。lti2遺伝子には552個のアミノ酸残基からなるopen reading frame(ORF)が含まれており、これはαアミラ-ゼと約20%の相同性を示した。この遺伝子の産物を大量に発現させてタンパク産物を確認するために、ORFを含む領域をプラスミドベクタ-であるpBluescript SK+およびpKK233ー2に組み込んで、大腸菌XLー1 blueに形質転換した。IPTGによる誘導によって約75kDaのポリペプチドが合成された。この分子量はアミノ酸配列から推定される値63,832よりもやや大きいが、このくいちがいの原因ははっきりしない。この75kDaポリペプチドを多量に発現している大腸菌の抽出液についてアミラ-ゼ活性を測定したが、全く検出されなかった。このことは、lti2遺伝子にコ-ドされているのがαアミラ-ゼそのものではないことを示しており、類似のαグルカン転移酵素なのではないかと推定される。遺伝子の発現制御を調べるために、lti2およびlti46のプロモ-タ-領域をそれぞれシフェラ-ゼおよびβガラクトシダ-ゼ遺伝子のコ-ド領域につなぎ、それぞれAnabaenaと大腸菌に形質転換した。lti46プロモ-タ-は大腸菌内では低温による誘導を受けなかったが、lti2プロモ-タ-はAnabaena内で機能し、低温によって発現量はやや増加した。しかしin vivoにおけるlti2転写産物のレベルは低温シフトにより約40倍になるのに対して、lti2プロモ-タ-につないだルシフェラ-ゼの活性は2ないし3倍にしかならなかった。このことはlti2転写産物のレベルの調節にはRNAの分解も関与していることを示唆している。
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