研究概要 |
高等植物細胞の核表面には微小管(MT)が形成される際にinitiatorとして働らくいわゆる微小管重合中心(MTOC)と呼ばれる活性が存在する事が前年度の研究で明らかになった。その性質は動物細胞における中心体のMTOCとはかなり異なりtubulinの付加はproximal endでおこった。MTOC活性を有する小果粒を核より分離しその構成タンパク質をSDSーPAGEで分析すると約50kdのペプチドが主構成成分であることがわかった。この50kdペプチドはニワトリの脳のαーtubulinに対する抗体と交差反応を示すことから免疫学的にはαーtubulinと類似性があると考えられるが,単独で存在することやその機能から考えるとγーtubulinと考えることもできる。さらに二次元電気泳動が分析すると2個のペプチドに分離することがわかり,一方はおそらくリン酸化による修飾を受けたものと考えられる。この両ペプチドの量比がcell cycleで変化することからMTOCとしての活性はこの修飾により調節されているものと考えられる。MTOCからのMT形成に核の可溶性分画が必須であることを考えると,その必須成分はこの50kdペプチドの修飾に関与するもの,例えばprotein kinaseあるいはphosphoprotein phosphataseの様な酵素ではないかと考えられる。50kdペプチドに対する抗体の作製を試みた結果いくつかのクロ-ンが得られた。このうちには分離した核をドット状に染色するものがありMTOCを特異的に検出することができると思われる。 最近,細胞膜標品を分析するとβーtubulinによく似たペプチドが単独で存在することがわかった。植物細胞では核表面のαーtubulin関連タンパクを重合中心として伸びたMTが細胞膜上のβーtubulin関連タンパクによりその成長が終止するという機構が存在するのではないかと考えられる。
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