研究概要 |
ユ-グレナの光化学系II/酵素発生系の構成タンパク質の一つである膜表在性30KDaタンパク質の輸送過程を調べた。その結果,このタンパク質は,45KDaの分子量をもつ前駆体として細胞質で合成された後,小胞体,又は小胞体様の性質を示す膜を経由して葉緑体へ輸送され,成熟型になることがほゞ確実となった。このタンパク質前駆体の構造を更に詳しく解折するために,cーDNAクロ-ニングを行った。現在,この遺伝子の構造を引き続き解折中である。 オオムギの実生を用いて緑化過程での酵素発生系の形成機構の研究では,エチオプラストが葉緑体に発達する際に,チラコイド膜に蓄積する酵素発生系のタンパク質の存在状態を主に検討した。オオムギでは,エチオプラストに,膜表在性の3種類のタンパク質とチトクロムb_<559>が存在し,光照射に伴って短時間のうちに光化学系IIの反応中心結合タンパク質やアンテナクロロフィル結合タンパク質が蓄積し,光化学系II複合体が完成することが分った。暗条件下でのエチオプラストにおいて膜表在性タンパク質とチトクロムb_<559>が複合体の前駆体の様なものを形成しているのかという問題を架橋実験などで検討している。 酵素発生反応には,光化学系IIの反応中心,マンガン原子,表在性タンパク質などが関与しているが,それらがお互いにどのような位置関係をチラコイド膜上でとり,どのような過程で反応が進行するかについては未だ充分な理解がなされていない。本年度はこの問題に取り組むために,ホウレンソウの光化学系II種品の酵素発生系膜成分の除去と光阻害との関連を調べ,その結果,光化学系IIからマンガン原子と膜表在性タンパク質が除去された条件下で弱光を照射すると,反応中心結合タンパク質と,それより更に著しい程度でアンテナクロロフィル結合タンパク質が分解されることを初めて見出した。
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