酸素発生系の形成機構に関連して、ユーグレナの酸素発生系タンパク質である膜表存性30kDaタンパク質の精製を行った。このタンパク質の精製には、チラコイド膜を脱イオン水で処理するという極めて簡単な方法が有効であることがわかった。また、この結果から、このタンパク質がチラコイド膜に弱く結合していることが示唆され、高等植物葉緑体の対応するタンパク質である33kDaタンパク質の存在状態とは異なることが示された。ユーグレナ30kDaタンパク質の輸送経路を明らかにするために、このタンパク質のcDNAクローニングを行ない、タンパク質前駆体の構造を決定した。また、in vitro合成したタンパク質前駆体を用いて、単離葉緑体へのタンパク質輸送の実験も行った。ただし、輸送条件の設定の不完全さから、再現性のよい輸送系を確立するには至っていない。さらに、電子顕微鏡により、葉緑体包膜上にあるタンパク質輸送部位(contact site)の観察を行った。その結果、ユーグレナでは包膜の三重構造が輸送過程を律速している可能性が示された。免疫電顕により、タンパク質の成熟型および前駆体の細胞内の存在部位を決定する試みを行ったが、技術的な問題を未だ克服できていない。 また、オオムギの光化学系IIの形成過程をタンパク質の蓄積のレベルで検討し、エチオプラストが葉緑体にまで発達する過程での33kDaタンパク質とcytochrome b559の果たす役割について、基礎的な知見を得た。
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