研究概要 |
1)セルロ-ス合成能力の低い一遺伝子突然変異オオムギの中,Fs2の2種およびfs3の一種の第4節間を使用して、セルロ-ス量を測定したところ,正常のものと比較して、セルロ-ス合成能力の低いものでは10〜20のセルロ-ス量しかなかった。ペクチン,ヘミセルロ-ス,リグニン量には特別な変化は見られなかった。そうしたことから新しく使用した一遺伝子突然変異オオムギはすべてセルロ-ス合成能の低い系統であった。 2)セルロ-ス合成能の低いのはセルロ-スの分子量が低いためか、セルロ-ス分子の本数が少ないのかを調べる目的で、リグニンを取り除く際に通常使用されるアルカリ法ではセルロ-スの分子量を低下させることが判明したため,酸性で加水分解するのがセルロ-スの分子量を測定するために必須であることがわかった。酸性法でセルロ-スを純粋に取り出し、固有粘度法でセルロ-ス分子量を測定した結果,どの系統も分子量は全く変化していないことから、セルロ-ス合成能の低い原因は合成されるセルロ-ス分子の本数が少ないためであることが判明した。 3)走査電子顕微鏡で組織の断面を観察したところ,表皮,皮層,維管束など、いずれの組織でも細胞壁が薄いことがわかった。 4)fs2はfs3と比較して成長後期からセルロ-ス合成能が低下することから、セルロ-ス合成停止の時間的差があることが判明した。 以上のような結果から、セルロ-ス合成能の低い系統もセルロ-ス合成酵素を持っており、成長後期から何らかの理由でセルロ-ス合成能が停止することがわかった。来年度は一遺伝子突然変異系統の細胞培養を行い,細胞のセルロ-ス合成停止の条件を調べたい。
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