研究概要 |
高等植物の光屈性、および重力屈性がオ-キシン(IAA)の不均等分布によって起こるかどうかを、連続赤色下で育てたトウモロコシの芽生えを用い、また機器分析法で組織に含まれるIAAを定量することによって調べた。なお、光屈性は、子葉鞘の片側を青色光で8秒照射することによって、重力屈性は子葉鞘を水平から60^0傾けることによって誘導した。得られた主な結果は、次の通りである。 1.すでに報告した方法(Iino & Carr 1982: Plant Physiol. 69, 950ー956)を改良して、さらに小量の組織に含まれるIAAが定量できるようにした。 2.光、重力屈性における屈曲反応を子葉鞘の異なった部分で調べた。光屈性では下の組織ほど反応が遅れて、重力屈性ではほぼ同時に開発した。 3.子葉鞘の先端から3ー8mmの間の組織を縦に2分割して、IAAの横勾配を調べた。光屈性刺激によって、約1:2(照射側:影側)の勾配が生じた。この勾配は、照射側のIAA量が減少し、影側が増加することによって生じた。重力刺激でも同様の勾配が誘導された。4.光屈性におけるIAA不均等分布の誘導をさらに詳しく調べた。その結果、次のことが明らかにされた。(1)切り取った子葉鞘先端から寒天片に拡散してくる、いわゆる拡散型IAAにも、約1:2の勾配が生じる。(2)組織における横勾配は、屈曲反応の場合と同様に、子葉鞘の基部で遅れて開始する。(3)IAAの横勾配は、屈曲反応に先行して誘導される。 以上の結果から、光、重力屈性はIAAの不均等分布が原因になって起こると考えられる。光屈性におけるIAAの不均等分布は、IAAの横移動が子葉鞘先端で誘導され、それによって生じるIAAの横勾配が下部に伝達されることによって起こると考えられる。
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