植物の膜透過は光合成以外にも光制御されることが知られている。そこでクロレラ細胞の原形質膜とその機能(膜透過)に焦点をおき、膜透過に関与する輸送系の制御及び光受容体を検討し、以下の結果を得た。 1.アミノ酸(プロリン系・アルギニン系)の取り込みが青色光により促進され、これらは輸送担体の合成誘導を伴う結果をクロレラで見いだした。またアミノ酸はH^+共輸送により取り込まれ、青色光下では取り込み誘導が2-4時間後に認められた。(Kamiya & Kowallik 1991)。 2.ヘキソース取り込みに対する青色光効果:ヘキソースは原形質膜に存在する輸送担体を介して、H^+共輸送により取り込まれるため、ヘキソース添加により膜電位の脱分極が起こり、脱分極により活性化されるK^+チャネル(K^+放出)の存在が知られている。そこでヘキソース添加により誘導されるH^+共輸送、K^+放出を青色光下で検討した結果、それぞれの活性は顕著に阻害され、青色光によるグルコース取り込み阻害を反映した(Kamiya 1991)。 3.ヘキソース取り込みとカルシウムの影響:ヘキソースの取り込みがカルシウム添加により顕著に促進されることを見いだした。カルシウムは細胞内外の情報伝達に関与することが知られているので、青色光によるヘキソース取り込み阻害にカルシウムが関与してるかどうか検討した結果、カルシウムは青色光による阻害効果を保護する(起こりにくくする)作用を持つことが判明した(Kamiya 1991)。 4.光によるK^+放出・取り込みの検討:青色光はK^+の取り込みを促進するのに対して、赤色光は顕著なK^+efflux(放出)が認められた。また赤色光域では735nmの近赤外光が最も有効であり、光受容体はフィトクロム類似の色素の関与が示唆された。K^+の膜透過は膜電位に支配されることが知られているのでシアニン色素をプローブに用い蛍光分析した結果、近赤外光は膜を過分極させることが認められた(Kamiya投稿中)。 5.細胞内カルシウムの挙動:カルシウム蛍光色素Indo-1を細胞内に導入する条件を検討した結果、酸性pH4.0、60-120分のloadingにより、顕著に細胞内蓄積が認られた。CaCl_2添加により蛍光ピークが短波長にシフトし、同時にK^+イオンの放出が起こった。今後は近赤外光下でIndo-1の蛍光変化を検討する必要がある(Kamiya投稿準備中)。 6.クロレラ原形質膜の単離:細胞を破砕し、電気泳動法でタンパクを分画した結果、野生株と比較して、変異体ではチラコイド膜片の混入が多く、膜の単離は今後の課題である。
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