1.Trichodesmiumの窒素固定活性は光依存性である。 平成3年度に引き続きTrichodesmiumの窒素固定活性制御に対する光の役割を明かにする目的で明暗サイクル下条件に適応した培養系を用い解析を行った結果 (1)暗期から明期への移行後の窒素固定発現は主として窒素固定酵素鉄たん白の活性化による (2)この活性化過程はたん白合成の翻訳レベル・転写レベルをそれぞれ阻害するたん白合成阻害剤で完全に阻害された。 (3)明期中期窒素固定活性が最大値に達した時点で短い暗期(30-60分)を与えられた細胞は窒素固定能(明条件で測定した活性)を完全に消失し活性回復には30-60分以上の光照射を必要とした。 (4)この回復過程を転写レベルのたん白合成阻害剤は完全に阻害したが翻訳レベルのたん白合成阻害剤は阻害しないことが明かになった。 以上の結果から本種の窒素固定活性維持に代謝回転の早い暗所で不活性化あるいは破壊される未知のたん白が関与している可能性があること、光は窒素固定反応に直接ATPと還元力を供給するだけでなく未知のたん白の合成あるいは活性化を通じて窒素固定活性維持に必要であるらしことが示唆された。 これらの結果から光照射下のTrichodesmium細胞中では光合成により発生する分子状酸素により不活性化あるいは破壊された窒素固定酵素を補うかたちで光による(おそらく未知のたん白を介した)酵素の活性化が常に起こっており、この過程が本種の明条件下で高い窒素固定活性を維持することを可能にしている少なくとも一つの要因であろうという作業仮説を提唱した。 2.平成3年度に引き続き本種のジェノミックDNAライブラリーから窒素固定酵素構造遺伝子のクローン化を行い鉄モリブデンたん白大サブユニットを含むと考えられるDNA断片の単離に成功した。 クローン化にラジオアイソトープを用いない従来とは異なる方法を適用したので結果を現在確認中で塩基配列決定が進行中である。
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