研究概要 |
1.紅藻類10種類で不動胞子を放出する際に、同時にこれら胞子が母藻周辺にすぐに着生しないように働く、自家胞子着生抑制物質も分泌されていることが、厳密な至適温度条件下で、各種母藻の浸出液及び熱抽出液を用いたバイオアッセイによって明らかにされた。 2.これら浸出液・抽出液は他種の胞子着生・発芽も抑制するが、さらに高濃度では胞子を死滅させ、反対に低濃度では発芽・生長を促進する。いわゆるアレロパシ-を示す。 3.この現象を引き起こすアレロケミカルは、種特異性を示すものと、共通性を示すものがあり、種によって異なることが示唆され、特に群落形成種において生育圏の拡大のための戦略の一つとして考察された。 4.共通性を示すアレロケミカルとして、紅藻アカバのメタノ-ル抽出物について、各種クロマトグラフィ-で分画し、質量スペクトルを解析して、この化合物がイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17ーicosapentaenoic acid)であることが確認され、同じ不飽和脂肪酸が調べられた他の紅藻4種にも共通して存在していることが明らかにされた。また同様に褐藻5種からオクタデカテトラエン酸(6,9,12,15ーoctadecatetraenoic acid)が共通して存在することも明らかにされた。これら高度不飽和脂肪酸は、紅藻キブリイトグサ及びダルスの四分胞子の着生・発芽に対して、各種母藻の浸出液や抽出液と同様の抑制・阻害作用を示し、高濃度では死滅、低濃度では生長を促進させるアレロケミカルとしての活性を示すことが証明された。 以上のことから、海洋岩礁域の海藻類は互いに生産・分泌するアレロケミカルの相互作用によって生育していることが明らかにされた。
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