異型胞子シダ植物を用いて本年度は野生のサンショウモの大胞子と小胞子とを1991年秋期から92年冬期において採取し、無菌前葉体を培養することを試みた。また、デンジソウの葉芽から無菌植物の誘導を試みた。 1.サンショウモ(Salvinia natans All.) 1.大胞子嚢と小胞子嚢を別々に採取して、乾燥条件下で低温保存することにより、実験を周年行えるようになった。 2.大胞子および小胞子の培養ための培地の検討を行った結果、一般に用いられるMurashige&Skoogのような多量要素の濃い培地では全く発芽を誘導することが出来なかった。1/5に希釈したWhiteの培地を用いることにより、両胞子からの前葉体を容易に誘導することが可能となった。このことは前年度、胞子の休暇、低温培養、光条件などを検討したこととはほとんど関係ないことが明らかになった。現在、両胞子からプロトプラストを単離する条件の検討および、混合培養による無菌胞子体の誘導を試みている。小胞子由来の前葉体からの精子の確認も行った。 これらの結果、サンショウモにおいて本研究の目的である生殖器官分化の制御機構を細胞レベルで研究することの目度がついた。 2.デンジソウ(Marsilea quadrifolia L.) デンジソウ胞子体の葉芽を殺菌処理することによる非常に簡単に無菌胞子体を誘導することが可能となった。この幼葉からプロトプラスト単離条件を検討中である。 3.その他としてシダ植物の精子を用いてDAPI染色、Feulgen染色などの顕微蛍光測光により、核相的比較を高い精度で行うことが出来るようになった。
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