研究概要 |
平成3年度に計画したAkaniaceaeとDrypetesの研究のうち、Akaniaceaeについては研究を終了し、投稿のための原稿も完成した。しかし、Drypetesについては研究を始めてしばらく後、研究材料の不備が分かり、代って平成2年度に研究を終了しているKoeberliniaとの類線の有無が問われているCanotiaについて、関連属のAcanthothamnus,Brexiaと一緒に研究を行い、原稿も完成した。Drypetesについては、平成4年度に材料を補充し引き続き研究を行う予定である。なお、平成2年度研究計画で積み残したSalvadoraceae/Tovariaceaeの種子の研究については、現在デ-タをまとめて原稿を執筆中である。以下に、Akaniaceae,Canotia(Acantho thamus,Brexia)の研究成果をまとめた。 1.Akaniaceaeの比較発生学。唯一の属Akaniaの研究により、この科は次のようなムクロジ目に共通の特徴をもつことが分かった。(1)胚珠は二珠皮性で、crassinucellate,(2)外珠皮は厚く、維管束をもつ,(3)胚のうはタデ型,(4)種子は有胚乳,(5)種皮は‘exotestal'で、exotestaは柵状組織に,mesotestaは海綿状組織に分化する。詳しい比較研究から、Akaniaceaeはムクロジ目のBretshneideraceaeと姉妹群であることが示唆された。 2.Acanthamnus,Brexia,Canotiaの比較発生学。研究三属とも、ニシキギ科との類緑群に共通の特徴をもつことが分かった。即ち、(1)胚珠はtenuinucellate(或いは、弱いcrassinucellate),(2)珠心が小さく、胚のうを除く組織は発生の初期に退化消失する、(3)胚乳はNuclear型,(4)種子は有胚乳,(5)fibrous exotegmenをもつ、などである。このことから、Canotiaを含む三属は、「からし油配糖体」生成植物のKoeberliniaとは類緑がなく、ニシキギ目に属することが明らかになった。
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