研究概要 |
ブラキスコ-ム属29種および種複合体145集団の染色体数を算定した。6種で初めての染色体数を、2種で新しい細胞型を、2種で新たにB染色体を報告した。体細胞分裂中期の核型を30分類群で、前中期の核型を25分類群で分析した。半数染色体全長で、2倍の違いがある2群を識別できる。それぞれが単系統であるか否かは、今後の検討課題である。この2群間では、染色体サイズが2倍も異なるにもかかわらず、容易にF_1の雑種が得られる。この雑種では染色体凝縮が非同調的で、一方の親から由来した大型染色体は、全長に渡って早期凝縮がおきた。染色体凝縮のパタ-ンが異なる雑種でも、組合せによっては、高いゲノム間の親和性を示した。2群のそれぞれについて、染色体数はn=9から2まで変化しているにもかかわらず、半数染色体全長は一定で、ほとんど変化はみられなかった。核型の異同に基づいて、いくつかの分類群の整理が可能であった。染色体の腕比の変化は、本属の進化傾向と特別な関係を見い出せなかった。葉緑体DNAのRFLP解析は、19分類群を12種類の制限酵素で切断し、アガロ-ス電気球動法により、DNA断片長変異のデ-タを得た。17個の共有派生的突然変異を検出し、ノコンギク属を外群として最大節約法で系統樹を作成した。半数染色体異数系列の中で、n=3が4より由来した例を除き、むしろn=5、6、9(一部)の染色体数はn=4から由来したことが示唆された。これらのデ-タは、1)ブラキスコ-ム属ではn=9から急激にn=4までの減少がおこり、減少過程の分類群は絶減している。2)n=4レベルで、多数の種を分化させる二次的種分化がおきた。3)現存するn=5,6,7,8,9(一部)をもつ種は、染色体数が増加する過程で生じた可能性が高い。等を示唆しており、本属の染色体進化が予想をこえて、はるかにダイナミックにおきていることが明らかになった。
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