1.日本には1200種を越す蘚類植物が記録されているが、それらの中には東アジアと北米東部にのみ隔離分布する種があり、これまで研究代表者らにより研究されてきた。本研究では、それらの種を詳細に研究すると共に、近年の報告についても分類学的特徴を検討した。これらの結果は近く印刷公表される(岩月)。 2.ニュ-カレドニアの蘚苔植物の起源と種分化について研究した。この島では苔類のヤスデゴケ科と蘚類のホウオウゴケ科を比較すると、固有種の数に大きな差があるが、それを長距離散布の能力と大陸移動に関連して考察し、結果を論文として発表した(岩月)。 3.広島大学および服部植物研究所所蔵の標本、資料をもとにして、日本産蘚類植物の種に関するデ-タベ-スの作成に努力し、ほぼ完成に近ずいている。デ-タは1991年中に印刷公表する(岩月)。 4.奄美大島および徳之島で、平成3年1月18日から27日まで蘚類の調査を行い、〓歯の観察、胞子の発芽、およびイソ酵素解析用の資料約80点を採集した(樋口)。 5.生きた資料で、実験により胞子や無性芽の発芽能力を研究した。1991年度において更にデ-タを集め、長距離散布の適否を研究する予定である。また、日本産蘚類の無性芽の形態と発芽パタ-ンを詳細に研究し、発表した(岩月・伊村)。 6.走査型電子顕微境を用いて、蘚類の〓歯の構造を観察し、多くの種についてデ-タを集めた(岩月)。 7.電気泳動分析用の器具一式を購入し、電気泳動法の諸条件を確認するための予備的実験を進めている。これまでに、ヒノキゴケ属、シバゴケ属、ツルチョウチンゴケ属など数種の蘚類を培養し、イソ酵素のバンドパタ-ンを検出しつつある(樋口)。
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