研究概要 |
1。日本産蘚類のチェックリストを作成した。その結果、1991年の時点で、321属、1180種が日本(琉球列島、小笠原を含む)に産することが明らかになった。この数は北米大陸に生育する蘚類の種の総数にほぼ匹敵する。 2。東亜と北米東部に隔離分布する蘚類の種の植物地理学的、ならびに植物分類学的再検討を行った。その結果、両地域にのみ隔離分布する34種を確認した。その他に両地域に生育する姉妹種11組について、詳細を明らかにした。更にこれらの種の雌雄性、胞子形成の頻度などについても研究し、両地域における蘚類植物の種分化について論じた。 3。日本産ホウオウゴケ属の多くの種の胞子散布にとって、もっとも重要なさく歯の微細構造を、走査型電子顕微鏡を使って観察し、多くの新知見を得た。この結果をもとに、本属の亜属以下の分類、種分化について論じた。 4。蘚苔植物の進化と最初の陸上植物について研究し、発表した。 5。キンシゴケ科、Ectropothecium,Clastobryum,およびAulacomniumなどの蘚類の分類学的研究を行ない、種分化について論じた。 6。日本産の多くの蘚類の無性生殖器官を詳しく研究し、それらの新しい分類を行なうとともに、蘚類の種分化との関係を論じた。 7。ニューカレドニアの蘚苔植物フロラの起源について、主として生殖機構や分布手段である胞子の大きさなどから論じた。 8。日本産ヒノキゴケ属の2種の種分化の程度を明らかにする目的で、イソ酵素の変異を調べ、結果を考察中である。
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