母性遺伝の様子の崩れる株、核様体の異常になった株をさらに分離することを行った。その結果、接合子分析で20%、80%の両性遺伝をそれぞれ示す2株を得た。また、前回の葉緑体当りの核葉体数が正常株の約5倍を持つ変異株の先祖の株は常に不完全4分子をつくる。これら4分子の中から検索した結果、核葉体数の異常に多いと思われる1変異株を更に分離した。詳しい解析を継続中である。 正常な接合では通常、高頻度で母性遺伝が起こるが同時に低頻度で両性、父性遺伝も起こることが知られている。母性遺伝の頻度の算出には普通、約100μgの低濃度の抗生物質を用いている。今回、500と1000μgの高濃度の抗生物質でも生育できる株を分離して母性遺伝の頻度を調べた。接合子分析を行った結果、親株で用いたのと同じ高濃度の抗生物質の検定にもかかわらず、これらの株は母性遺伝を示した。また低頻度で母性遺伝の様式が崩れた。これらは、葉緑体のもつ80ー100コピ-の葉緑体遺伝子全体を、父親由来葉緑体内で、完全に消化してしまう機構をクラミドモナスは持っていることを示す。 代表的高等植物の花粉形成課程を蛍光顕微鏡下で観察した。その結果、母性遺伝を示す植物では、花粉の2細胞期前後で精細胞内のオルガネラ核様体はすべて消失するが、両性遺伝をする植物では成熱花粉の精細胞でも多数残っている。そして、母性遺伝の原因の雄由来葉緑体核の消化に直接関与うると考えられるヌクレア-ゼCの花粉内の活性は、母性遺伝植物では高いが、両性遺伝植物では極度に低いか検出不可能であった。このことは、ヌクレア-ゼCが精細胞内で直接オルガネラ核葉体を消化していることを示唆する。またマメ科植物でこの酵素の分離精製をし、粗分画を得た。
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