研究概要 |
哺乳類精子は精巣内で形態的にはほぼ完成するが、運動能や受精能はまだ備わっていない。精子は雄性生殖管内で成熟して運動能を獲得し,また射出後雌性生殖管内で受精能獲得を行い,ハイパ-アクチベ-ション(超活性化)や先体反応をおこして卵と受精する。これらの過程での膜系の変化を明らかにするために、ハムスタ-精子を実験材料として脂質の変化を追及した。その結果。脂肪酸組成については、精巣上体尾部精子は同頭部精子に比べて、パルミチン酸の割合いが低くステアリン酸の割合いが高かった。しかし全脂肪酸量に有意な差は認められなかった。次にmーTALPー6溶液中で超活性化をおこした精巣上体尾部精子について脂肪酸を分称したところ,脂肪酸組成に全く変化は認められなかった。しかしCaイオノフォアを用いて先体反応を清起した精子では,哺乳類精子に特徴的な脂肪酸であるドコサヘキサエン酸とドコサペンタエン酸の割合いの減少とパルミチン酸の割合いの増加が認められた。これらのことから,先体反応の過程で脂肪酸組成に大きな変化がおこることがわかった。ところで,精子の成熟過程ではステロ-ルの組成がいちじるしく変化し,精巣上体頭部ではコレステロ-ルが主要ステロ-ルであるが,尾部精子ではコレステロ-ル生合成中間体のデスモステロ-ルやコレスタ-ク,24ージエンー3βーオ-ルが高い割合いを占める。これは△^7ー5ーデサチュラ-ゼが精巣上体尾部では不活性化されているか,あるいは存在しない可能性を示唆する。この点を明らかにするために,この酵素活性の検出法を検討中である。 なお除膜精子を用いた運動パタ-ンの解析では,cAMPの濃度上昇および低濃度のCa^<2+>が超活性化されたものと似た運動を示し,中片部が大きく屈曲するようになることがわかった。
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