研究概要 |
昆虫の卵黄蛋白質は一般に脂肪体で合成され、体液中に放出され、発育中の卵巣に取り込まれる。卵黄蛋白質遺伝子の発現は、雌特異的に発育の特定の段階で起こり、またホルモンの支配下にある。カブラハバチ(膜翅目ハバチ科)の卵黄蛋白質は2本のポリペプチド(L、分子量180,000およびS、50,000)からなり、雌特異的に合成されるが、幼若ホルモン塗布により、雄成虫脂肪体に卵黄蛋白質の合成を誘導することが可能で、それにより、雄成虫に移植された卵黄畜積前卵巣の成熟を引き起こすことができる(Hatakeyama,Sawa and Oishi 1990;Hatakeyama and Oishi 1990)。 ハバチ科4種の卵黄蛋白質について、SDSーポリアクリルアミド電気泳動法(PAGE)、および抗ーL、抗ーS抗体を用いた免疫ブロッティング法で調べたところ、カブラハバチのものと識別することはできなかった。一方、ミフシハバチ科5種では、SDSーPAGEで多型を示し、3種については分子量によりカブラハバチと識別可能であった。また、抗ーL、抗ーS抗体とは、さまざまなパタ-ンの交叉反応を示した。このうち、アカスジチュウレンジでは、3本のポルペプチド(1、分子量180,000;2、125,000;3、55,000)が検出されるが、抗ー2抗体は1と2に、抗ー3抗体は1と3に反応した。ポリペプチド1、2、3は、1本1(=2+3)として脂肪体で合成され、一部は2、3、の2本に分解された後、体液中に放出される可能性がある。カブラハバチでも、脂肪体抽出物について調べると、L、Sのほかに(L+S)の分子量をもち、抗ーL、抗ーS抗体のいずれとも反応する1本のポリペプチドが検出された。なお、アカスジチュウレンジ雌にカブラハバチの卵黄畜積前卵巣を移植すると、アカスジチュウレンジ型の卵黄を畜積したが、卵は成熟には至らなかった。
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