未受精卵が単為発生をする膜翅目昆虫を用いて、成熟卵における卵黄蛋白質の相同性と変異について、また成熟未受精卵の卵核活性について実験を行った。 広く膜翅目全般(2亜目、8上科、11科、31属、42種)について、まず卵黄蛋白質(ビテリン)をSDSーポリアクリルアミド電気泳動法で分けて分子量の異同を調べた。次に、カブラハバチ(広腰亜目、ハバチ科)ビテリンの2本のポリペプチド、L(分子量180K)とS(50K)、に対する抗体を用いて、ウェスタ-ンブロッティング法によりビテリン抗原性の保存について調べた。広腰亜目ビテリンは180K付近のもの1〜2本、50K付近のもの1〜3本からなること、一方、細腰亜目では180K付近のもの1〜3本からなることが分かった。また、ビテリン抗原共通性は、亜目を越えて広く保存されていることが分かった。興味深いことに、広腰亜目では抗L抗体は分子量の大きいビテリンにのみ反応し、抗S抗体は分子量の小さいものにのみ反応(複数本の場合は複数本に)したのに対し、細腰亜目では、1〜3本のビテリンのうち1本のみが抗体に反応し、また、抗Lおよび抗S抗体のいずれもが反応する場合が多かった。この結果はビテリン蛋白質の遺伝子の構造に対し重要な示唆を与えるものである。 成熟未受精卵に人為的に注入された精子は、受精しない限り発生に参加できないことが分かっている。精子核の発生参加を誘導する試みを続けている。成熟未受精卵の卵核は、40°C、10分の熱処理でほぼ完全に不活性化できることが分かった。
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