節足動物の主要な光受容器である複眼の視細胞の光受容部位はラブド-ムといわれ、その細胞膜が管状に突き出した微絨毛(microvilli)が無数に規則正しく配列されたものである。この膜の中に光を最初に吸収する視物質が含まれており一連の視興奮系の初発反応の場である。 カイコ蛾(Bombyx mori)にラブド-ムが発生する蛹の時期に10、000luxという極端に強い光を連続照射すると、ラブド-ムの発生はあまり阻害されないが、ミエロイド小体が視細胞中に多数発生しているのが観察された。ミエロイド小体は板状の構造がぎっしりと平行に配列されたもので、その方向はラブド-ムと直角、即ち光の方向と平行に配列されている。これは正常な昆虫の複眼には発生の途中を含めて見られないものである。フリ-ズフラクチャ-法での観察によると、このミエロイド小体の膜内粒子の大きさや密度はラブド-ムのそれらとほぼ同じであることがわかった。またオ-トラジオグラフィ-法での観察によりラブド-ムと同じ程度、同じ蛹の時期(中期)にラベルされたアミノ酸(ロイシン)が取り込まれることが観察された。更にたとえ10、000luxで連続照射しつずけても成虫(蛾)になるとミエロイド小体は視細胞から消失してしまうことが分かった。これらのことから光照射により視細胞内の小胞体で作られる光受容膜の合成が異常に昂進し、この過剰に生産された光受容膜が一時的に貯蔵されている構造がミエロイド小体であると推測した。視細胞の光にたいする応答を電気生理学的にしらべたところ、ミエロイド小体を含んでいる視細胞は正常と変わり無い反応を示した。 ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)をカロチノイド欠乏で飼育し光照射によるラブド-ムの破壊と餌の関係を調べた。その結果、カロチノイドが欠乏するとラブド-ムの微細構造は破壊され易くなることが分かった。
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