研究概要 |
細胞膜に存在するphospholipase Cにより,同じく膜の構成成分であるPlP_2から加水分解生成物のひとつととし産生されたIP_3が2次メッセンジャ-として,細胞内のCa^<2+>貯蔵部位の膜のIP_3受容体に作用し,その放出を促すという作用機構を,色素胞において証明したが,さらに色素胞反応と細胞内Ca^<2+>濃度の同時測定装置を培養黒色素胞に適用して,カテコ-ルアミンによる刺激に際して,メラノソ-ム凝集反応に先だつCa^<2+>の細胞内濃度の上昇が確認できた.このIP_3系の関与はアドレナリン受容体としてα_1受容体の関与を示すものであり,実際,今回薬理学実験によってこのα_1受容体の存在が確認できた.以前,我々はナマズ科の魚類では交感神経節後繊維の刺激による黒色素胞内のメラノソ-ムの凝集が,ムスカリン型のアセチルコリン受容体を介して進行することが見出し,発表していた.また,ナマズ目の別科の魚種にもナマズ科に近縁のもののなかには,神経伝達はアドレナリン性だが,アセチルコリン受容体を併せもつものを数多く見出し,やはり公表している.今回,ナマズ目以外の魚種,すなわち,コイ科の2種,カワムツ(Zacco temmincki)およびオイカワ(Z.platypus)で,アセチルコリン受容体を併せもつものも初めて見出し,硬骨魚の系統進化の解明に新たな手がかりを示し得た.このムスカリン型のアセチルコリン受容体に係わるシグナル変換機構は,アドレナリン作動性伝達の場合とは異なる可能性が高く,その解明を開始した.虹色素胞についての研究も進展し,ことにハゼ科のドンコ(Odontobutis obscura)の虹色素胞は小型反射小板が樹状突起内を凝集・拡散するタイプで,凝集に伴なって小板が成層し,反射光色が短波長側に移動するという細胞運動と呈連について新しい見解を示し得た.
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