研究概要 |
この研究は、将行ホヤのホメオボックス遺伝子の機能を明らかにしていく1つの有力な方策として、遺伝子導入の方法論を確立することを目指したものである。また、実験材料のマホヤ胚が冬季しか得られないため2年継続の形をとった。 1.胚への遺伝子の導入法確立に当たってモデルとして用いる遺伝子については、ホヤでは適当なものがなかった。しかし、ホヤにおいてはニワトリβーアクチンとクロスハイブリダイズする遺伝子があり、それらが発現パタ-ンの違いから少なくとも4つに分類できることを明らかにしたので(西駕、未発表)、本研究の1プロジェクトとして、これらの遺伝子の単離に取り掛かった。その結果、64細胞期から発現を開始し、発生の進行と共に次第に発現が増加するタイプ、maternalに存在、あるいは、恒常的に発現をするタイプの2種の遺伝子を単離しアクチン遺伝子と同定した(西駕、発表準備中)。その他の1つである筋肉型アクチンの単離については、京大、佐藤らとの共同論文報告がある(Kusakabe et al.,1991)。 2.ホヤ胚へのマイクロインジェクションについては、いくつかの条件を勘案し、マウス卵へのマイクロインジェクションと同様な方法で、コリオンを残した状態で側方から針を刺入する方法を試してみた。胚へ針を刺入出来る時期、針の径などいくつかの基礎的な情報や、約半数の実験胚が後期尾芽胚までは対照胚と同様発生した等の予試験的な結果は得られたが、方法に対する習熟度、例数がこの期間では十分とはいえず、方法として確立するところまでは至っていない。今後は、この方法に対して習熟度を深め、導入したDNAの性状や発現について明らかにしていきたい。そして上記のアクチン遺伝子のプロモ-タ-領域が、この方法で同定できることを示したい。
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