1.沖縄産ナガウニには、棘の色や習性等の違いにより4つの異なるタイプ(AーDタイプ)が存在している。これら4タイプの系統進化学的関係を蛋白質電気泳動法により調査した。その結果、検出された15酵素28遺伝子座の内、7遺伝子座において、4タイプで異なる対立遺伝子が固定されていた。これは、4タイプが互いに生殖的に隔離された別種であることを示している。また4タイプ間の遺伝的距離は、D=0.115ー0.224であり、他動物の近縁種間で観察される値であった。また遺伝距離から作成した分子系統樹から、AタイプとCタイプ、BタイプとDタイプが近縁であることが判明した。そして、これら4タイプの祖先型は現在のC・Dタイプのようなナガウニであると推定された。 2.棘皮動物門4綱:ウニ、ヒトデ、ナマコ、クモヒトデ類の系統類縁関係については諸説が提案されており、極めて不明な点が多い。申請者はこれら4綱の系統類縁関係を解明するため従来にない新たな分子的手法を試みた。即ち、4群からグルコ-ス6リン酸脱水素酵素(G6PD)を精製し、それらの酵素学的性質を比較し、その類似性を定量化した。その結果得られた分子系統樹から以下のことが示唆された。(1)最も近縁関係にあるのはヒトデとナマコである。(2)次にこのグル-プに近縁なのは、クモヒトデである。(3)ウニは4群の中で最も遠い関係にある。(4)ヒトデとナマコは進化的に新しい棘皮動物群である。(5)一方、ウニは4綱の中では最も古い起源を持つ原始的な棘皮動物である。(6)分子系統樹から棘皮動物の進化の方向性を推定すると、堅い骨格(殻)を持つ防御を主体とするもの(ウニ)から、徐々に骨格を無くし、筋肉系を発達させたもの(ヒトデ、ナマコ)が進化してきたと推測された。
|