Wistar/Tw系ラットは、雄では16月齢頃、雌では20月齢頃より多飲多尿となる。これまでの検討から本系統は生体のホメオスタシス維持に重要な水・電解質代謝及び腎機能に関し加齢促進動物と考えられた。本研究ではこの亜系統ラットを用い、エイジングにともなう腎臓及びそれと関連した内分泌系変化の解明を目的とした。 1.腎臓生理機能の方化について検討し、雌ラットで血中リン脂質やトリグリセリドの加齢にともなう増加を見いだした。これらは腎機能の低下にともなう臨床変化像としてヒトで知られている変化と一致した。2.心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は本系統では加齢にともなう変化はなかった。なお糖尿病(NOD)マウスも発症の結果多尿となるのでANPを検討し、血中値の低下、心房での増加を見いだし報告した。3.加齢にともなう血中アルドステロン値の低下、血漿レニン活性の低下(約10分の1)を見いだした。これは腎臓の病理変化にともなうレニン合成分泌の低下が原因と考えられた。すでにエイジングにともなう血中バソプレッシンの上昇を報告しており、以上より水・電解質代謝関連ホルモンの変化の実態が明らかになった。さらに4.雌で加齢にともない尿中カルシウムが一日排泄量で約10倍と著しく増加することを見いだした。5.そこで骨の変化について検討した。ソフテックス写真における加齢にともなう明らかな骨の実質の減少、大腿骨の乾燥重量の低下やカルシウム含有量の有意な減少が見られた。また、尾椎骨の乾燥重量の低下や力学的骨強度の有意な低下も観察された。これらの変化は臨床的には老齢者や閉経後に見られる骨粗鬆症や骨軟化症に対応し、本系統が骨粗鬆症のモデル動物になりうることが考えられた。6.エイジングにともないカルシトニン濃度は変化しなかった。 カルシウム代謝変化の機構に関して内分泌系や雌雄差の問題も含め、今後さらに詳細な検討が必要である。
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