研究概要 |
ラット下垂体前葉の成長ホルモン産生細胞(GH細胞)とプロラクチン産生細胞(PRL細胞)に着目して前葉細胞の分化、増殖、最終分化機構について解析した。1.GH細胞は胎齢18日に、PRL細胞は胎齢19日に出現することを確認した。GHとPRLを同時にもつmammosomatotroph(MS細胞)を観察したが、MS細胞はPRL細胞よりも先に出現することから、PRL細胞はMS細胞から出現する可能性を示唆した。2.GH細胞、PRL細胞には微細形態学的に各々3種のサブタイプに分けられ形態学的多様性のあることを示した。GH細胞、PRL細胞のサブタイプの出現頻度はホルモンの分泌動態や、エイジにより変動することを明らかにした。各サブタイプは、細胞の最終分化の過程を示していると考えられる。3.GH細胞には分泌機能にも多様性があることを逆溶血斑反応により明らかにした。GH分子には5種のisoformが存在し分子レベルでも多様性のあることが示された。4.GH細胞、PRL細胞はそれぞれ細胞分裂して増加することを明らかにしたが、前葉細胞の分裂にはインシュリンが関与していることを明らかにした。5.GH,PRL分泌の加齢変化を調べたところ、GH、PRL合成が各遺伝子の転写レベルで低下していることを明らかにした。本研究では、細胞増殖機構の分子生物学的解析が充分にできなかったが、今後、第4項の知見を基に、細胞増殖の調節因子の同定および細胞分裂に要する情報伝達系を分子生物学、生化学的に解析する予定である。
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