1.ウナギの心房より心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を、心室より新しいホルモンである心室性ナトリウム利尿ペプチド(VNP)を単離し、それらの一次構造を決定した。また、ウナギの心室からVNPのcDNAをクロ-ニングして、その塩基配列を決定した。現在、ウナギの心房からANPのcDNAのクロ-ニングを行なっている。 2.ウナギANPとVNPのラジオイムノアッセイ系を確立してウナギの心房、心室、及び血漿を測定したところ、心臓の全量ではANPがVNPの3倍であったが、血漿中では逆にVNPがANPの3倍含まれていた。 3.金コロイド法を用いて電顕で観察すると、心房筋細胞にはANPを含む分泌顆粒が多数存在するが、心室筋細胞中にはVNPを含む分泌顆粒が少ししか存在しないことがわかった。 4.ウナギの心房、及び心室の組織片培養をおこない、組織中に貯えられているホルモン量と分泌される量を比べたところ、心房ではANPの多くは組織片中に存在するが、心室ではVNPの多くは培養液中に分泌されていることがわかった。 5.以上の結果より、ANPは主に心房でつくられ顆粒中に貯蔵されるが、VNPは心室でつくられた後に貯えられることなくすぐに分泌されるという作業仮説を立てた。 6.現在、 ^<35>Sでラベルしたシスチンを用いてパルスチェイス実験を行ない、心房と心室の組織片からのラベルされたホルモンの分泌速度を調べている。また、心房と心室におけるANPとVNPのmRNAの発現をノ-ザンハイブリダイゼイションを用いて調べ、それから予想される合成速度と貯蔵量との違いから、分泌速度調べている。
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