研究概要 |
脳の性分化の過程で、性ステロイドが軸索や樹状突起の伸展やシナプス形成を促進するばかりでなく、性ステロイドが特定のニュ-ロン群の細胞数を調節していると考えられるようになった。最近、我々はゴナドトロピンの周期的分泌調節に関係あるラットの視束前野の前腹側脳室周囲核(AVPvN)で周生期の性ステロイド投与によりニュ-ロン数が減少し、その際,AVPvN領域内に細胞死を示す組織像が多く見られることを見出した。本年度の研究結果は次のようなものである。 (1)胎生14日にBromodeoxyuridine(BrDU)を注射してニュ-ロンに分化した細胞を標識すると,AVPvN領域内のBrDU標識ニュ-ロンは胎生14日以後のアンドロゲンによってニュ-ロン数が減少する傾向があるので,性ステロイドはニュ-ロン増殖を抑制するのではなく,ニュ-ロン分化後に細胞が減少することが判明した。 (2)AVPvNニュ-ロンにはANP陽性ニュ-ロンが多数存在するが、ANP陽性ニュ-ロンは新生期のアンドロゲン投与によって減少する細胞群ではなく、むしろ、チロシン水酸化酵素(TH)陽性細胞が、新生期のアンドロゲンによって有意に減少した。したがって、TH陽性ニュ-ロンはAVPvNの性ホルモンによる細胞死を示す細胞群のマ-カ-のひとつになり得る。 (3)エストロゲン受溶体に対する抗体を用いて、AVPvN内のエストロゲン受容体含有ニュ-ロンの存在が免疫組織化学的に証明された。
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