研究概要 |
前年度はラットの視束前野の前腹側脳室固囲核(AVPVN)の発生過程で,アンドロゲンが,AVPVN領域のニュ-ロンの細胞死を促進することを報告した。BrDUを胎生15日に注射し,BrDU標識細胞に対するアンドロゲンの影響を調べた。その結果,胎生17日ではBrDU標識細胞は対照群とアンドロゲン投子群との間に有意な差は認められなかったが,胎生21日では,BrDU標識細胞はアンドロゲン投子群で有意に減少した。また,この時期にAVPVN領域にピクノ-シス(変性)像を示すニュ-ロンが有意に増加することから,15日以後の周辺で分化したニュ-ロンがアンドロゲンによって細胞死に至る可能性が示された。 発生過程の神経核の形成過程において,ニュ-ロン数の増減にニュ-ロンの移動が一つの要因として働いている。今回は,ニワトリ胚を用いて,LHRHニュ-ロンの発生を調べた。その結果,LHRHニュ-ロンが嗅板の上皮に由来し,嗅神経にそって,脳外から脳内へ移動して行くことが明らかになった。LHRHニュ-ロンが嗅神経にそって移動して行くとき,シアル酸に富む胎兒型NCAMが嗅神経とLHRHニュ-ロンに発現し,ニュ-ロンの移動が終ると消失することが判明した。また,早期ニワトリ胚の嗅枝を片側除去すると,無傷側は正常と同様にLHRHニュ-ロンは発生し,嗅上皮から嗅神経にそって前脳へと移動し,最終的には視束前野や中隔に位置する称いなるのに対して,片側の嗅枝が完全に除去された場合,手術側にはLHRHニュ-ロンを完全に欠くことが証明された。このことから,LHRHニュ-ロンの起源は脳内ではなく,嗅枝上皮に由来することが判明した。
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