本研究は、カエルの腎ネフロンにおける水電解質代謝に関係する種々のホルモン(下垂体後葉ホルモン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン)の作用部位ならびに作用部位におけるホルモン受容体分布密度を明らかにすることを目的として行われた。平成2年度は、主としてウシガエル腎臓の組織学的観察、組織培養系ならびにcAMP測定条件の確立と下垂体後葉系ホルモン(アルギニンバソトシン)について実験を行った。平成3年度は前年度の結果をさらに充実させるとともに、カルセミックホルモンの作用部位について研究を行った。 1.ウシガエル腎臓の光学顕微鏡と電子顕微鏡による組織学的観察。(1)腎臓ネフロンは、腎小体、頚節、近位尿細管、中間部、遠位尿細管、接合管、集合管より構成される。(2)遠位尿細管と接合管にミトコンドリアリッチ細胞が存在する。 2.組織培養ならびに測定条件。cAMP測定は、cAMP ^<125>I assay system(Amersham)、蛋白定量はProtein Assay法(BioーRad)を用いて微量サンプルを比較的効率よく測定できるようになった。 3.ホルモンの作用部位と腎ネフロンにおける受容体密度。(1)アルギニンバソトシン:腎小体、近位尿細管、遠位尿細管、接合管について調べた。単離各分節における基礎cAMP量には有意差はないが、春期の個体よりの標本では秋期のものよりも高い傾向を示した。春期の遠位尿細管と接合管標本でホルモン処理によるcAMP量の増加が観察された。しかし、晩秋期の個体からの標本では反応が著しく低下した。(2)副甲状腺ホルモン:近位尿細管と遠位尿細管標本においてホルモン依存性のcAMP量の増加は見られなかった。(3)メソトシンとカルシトニン:in vitro潅流実験ではメソトシンレセプタ-が尿細管に存在する可能性は低い。単離分節のアデニレ-トシクラ-ゼ活性については、実験進行中である。 4.今後の計画等。継続して実験を進めるとともに季節差等も考慮すべきであると考えている。
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