研究概要 |
1.脊椎動物各綱の動物の心房心室筋細胞内に心房性ナトリウム利尿ぺプチド(ANP)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が共存することを前年度明らかにいたが,本年度は更に詳細に検討し,次の結果を得た。これらペプチドは心筋細胞内の分泌顆粒に共存するが,コイ,ウシガエル,ラット,ヒトでは,BNP免疫活性よりANP免疫活性がはるかに強く,メダカ,スッポンではその逆であった。即ち,種により,ANPー,BNP様物質の含量比に差があると考えられる。 2.メダカの腹腔内に注射された ^<125>I‐ラットANPは,鰓と腸上皮に選択的に結合することをオ-トラジオグラフィ-で見出した。メダカの心筋細胞分泌顆粒にはANPおよびBNP様物質が存在することから,これらナトリウム利尿ペプチドは鰓や腸に作用し,水代謝調節に関与していると考えられる。 3.ANPはウズラで飲水行動を促進することが明らかにされているが,BNPも飲水行動を促進することを見出した。特に脳室内注射では腹腔内注射の約20分の1で効くことから,BNPは脳に作用して飲水を誘起すると考えられる。 4.血管平滑筋を弛緩させるANP,BNPとは逆に,これを収縮させるエンドセリン(ET)が脊椎動物各綱の血液中に存在することを前年度明らかにしたが,本年度はETの体内分布を調べたところ,脊椎動物各綱の動物で,視床下部ー下垂体系の細胞体と軸索にET免疫活性を認めた。また,免疫電顕=重ラベル法では,ラット後葉の軸索内顆粒にETとアルギニン・パソプレツシン,ETとオキシトシンの共存を発見した。また,魚の尾部下垂体系のニュ-トロンではETとウロテンシンの共存を発見した。
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