研究概要 |
両生類の発生過程は、水中から陸上生活への変態と呼ばれる著しい変化を伴う。本研究は、幼生期の結合組織に主眼を置いて、細胞構成の変化、細胞外マトリックスの分子構成の変動を生化学的、免疫細胞化学的に追求し、さらに無尾類と有尾類の変態過程の差違を比較することで系統進化的変遷を考えることである。 1,細胞構成の変動 幼生は甲状腺ホルモンに反応して変態期に著しい組織崩壊を起こすようにプログラムされている。真皮結合組織層には種々の遊走性細胞の侵入が認められるが、次によりコラ-ゲン繊維の崩壊に関わる細胞を同定した。(1)細胞間結合構造(intermediate junction)は、真皮中の繊維芽細胞の間に存在する。(2)ラテックスビ-ズを注入しその貧食能を比較すると、マクロファ-ジは著しい貧食能を示すが繊維芽細胞は低い。(3)細胞膜表面の糖鎖の違いを認識するレクチン結合性の差異をコロイド金標識MPAとGSー1について検討した結果、マクロファ-ジと好中球に特徴的に結合するが、繊維芽細胞や色素細胞には全く結合しない。変態期にコラ-ゲン繊維を貧食中の細胞の表面膜にはこれらレクチンの結合はなく、他の崩壊した細胞片を貧食中のマクロファ-ジには顕著であることから、繊維芽細胞がコラ-ゲン繊維の貧食消化に関与していると考えられる。 2,細胞外マトリックスの変動 (1)コラ-ゲン分子種(コラ-ゲンII、III、IV)無尾、有尾類幼生期変態期の変化を各々の抗体を用いて免疫組織化学的に検討中である。(2)ウシガエル幼生尾部より抽出したプロテオグリカンの構成を電気泳動法、液体クロマト法により分析し、コンドロイチン硫酸を分離精製し、免疫抗体作成中である。
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