本年度はモヨウフグ属魚類の新種の実態の解明と既知種も含めた本属魚類の外部形態の特徴を明らかにすることに重点を置いて研究を進めた。その結果、新種の追加標本を入手し、6新種が認められることを明らかにした。また、本属魚類の分類には色彩が極めて重要な形質となることが判明した。 6新種の中では、フィリピンから採集された種類と中東のオマ-ンから採集された種類は、それぞれ1個体しか標本がないので今後も他種との関係に検討を要するが、色彩が他の種類とは明瞭に異なるため、種として認めることに問題はないと思われる。フィリピン産の種類は、サザナミフグとワモンフグに似るが、尾柄部に黒褐色と白色の縦走線があるので区別できる。オマ-ンの種類は、体の表面に多数の褐色線が網目状に走り、本属の他種から明瞭に識別できる。 残りの4新種は複数の標本があるので、新種として認めることに問題はない。このうち、沖縄から採集された種類は、体の地色が褐色で細い白色線が網目状に走るので他種から識別される。第二の種は、太平洋のクリスマス島から採集されており、青黒色の体に多数の白色点があり、サザナミフグに似るが、胸鰭基部の内側に黒色斑がないので識別できる。第三の種はインド洋と太平洋に広く分布し、銚子沖、五島列島、インドネシア、ビキニ環礁、レユニオンからも採集もしくは記録されている。第四の種は、南アフリカから採集され、カスミフグに似るが、体型がカスミフグほど細長くないこと、尾鰭の縁辺が黒くないことによって識別できる。 今後は、新種の追加標本の入手を図って学会誌に報告を行うとともに、本属魚類の種間の系統的な関係を外部形態と骨学的特徴に基づいて解明する。
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