本年度はモヨウフグ属魚類のすべての種の標本を詳細に調査し、それぞれの種の特徴を明らかにした。調査の結果、本属には3新種を含む15種が存在することが明らかになった。それぞれの種の特徴と検索表は研究成果報告書で詳述するが、3新種は他の種から以下の形質で区別される。 南アフリカから得られた第1の新種は、Arothorn inconditusやカスミフグに似るが、前者からは体に白色点がないことで識別され、後からは尾鰭が短く(本種では体長の23.5ー27.2%、後者では25.8ー40.2%)、尾鰭の上縁と下縁が黒くないことで識別される。第2の新種はインド洋のレ・ユニオンとモルシブ、日本の銚子沖・五島列島、インドネシアおよびビキニ環礁に分布することが明らかになった。本種は全長60cmを越える大型種であるため、標本を採集して輸送することが因難である。このため調べることができた標本は日本産とビキニ環礁の4個体であった。本種はケショウフグやモヨウフグに似るが、眼の周りを青色線が同心円状に囲むこと、体に多数の細かい青色点があることによって識別される。第3の新種は沖縄から採集された。本種は体が淡緑色で多数の虫喰い状の細い線があることで他種から識別される。サザナミフグにやや似るが、虫喰い状模様で明瞭に区別できる。 沖縄の石垣島から採集された新種の可能性のあった種については、文献を詳細に調べ、模式標本も検討した結果Arothron carduusであることが明らかになった。本種は原記載以来報告がなかった稀種で、平成3年に学術雑誌に詳細な報告を行った。
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