研究概要 |
本年度は主として白亜紀細粒堆積物の化学組成について検討を行った。B_1およびB_2の2試錐からサンプリングした65ヶの試料と地表試料の119ヶについてXRF珪酸塩迅分析法により化学分析を行った。調査対象とした関門層群は背弧に生成した淡水成堆積関であり,火成活動が活発で、火砕物を多く含む。これからの寄与が細粒堆積物の化学組成にもよく反映していることが最大の特徴である。基盤のジュラ紀豊浦層群の化学組成が比較的一定の領域に集中しているのに対し,関門層群の化学組成領域は広い。この理由は、原物質が風化作用によって特定成分の濃集があったことに加え、上述の火砕物からの寄与,熱水変質作用などによる堆積物内での成分移動の結果と考えられる。 SiO_2/Al_2O_3:赤紫色頁岩,灰色〜黒色頁岩と火砕岩の頻度(%)分布パタ-ンが酷似しており、珪質生物遺骸などによるSiO_2の付加はみとめられない。 Fe_2O_3/Al_2O_3:広い領域に分散しており,玄武岩の平均値を大きく超えるものがみられる。この傾向は関門層群の特徴岩種である赤紫色頁岩において最も著るしい。また、これはFeとAlがそれぞれ独立に系に付加された可能性を示す。 MnO/Al_2O_3;MgO/Al_2O_3,CaO/Al_2O_3:この3者は化学組成領域が最も広く,極端に小さいものが存在する一方で極端に大きいものもあり,堆積後の成分移動を示唆する。また、3者の間には正の相関がみとめられ,よく似た挙動をしたことを示す。 TiO_2/Al_2O_3,K_2O/Al_2O_3:層準・岩種にかかわらず、ほとんど一定の領域内にある。堆積過程での成分移動が小さかったことを示す。
|