研究概要 |
研究計画の第1年度に予定していた5点の具体的な研究実施計画に基づき,実績を要約する. 1.日高帯のルロチ岩体,ニペソツ岩体についての野外調査を実施した.その結果,玄武岩類と周囲の堆積岩とは整合的な関係を示し,下位の堆積岩が玄武岩溶岩の内部に巻き込まれていることから,未固結の堆積岩の上の溶岩が流出したと判断され,その生成場を考えるうえで極めて重要な知見をえた.さらに,四万十帯の龍神層,犬居層群においても予察的な調査を行ない,同様の結論をえた. 2.上記の野外調査でえられた岩石資料について,大量の岩石薄片を作成し,玄武岩の斑晶組み合わせ,岩石組織の特徴,発泡の程度などを検討した.その結果,小規模な玄武岩岩体では,斜長石一単斜輝石,比較的大規模な岩体では斜長石一単斜輝石一かんらん石という斑晶組み合わせが卓越している傾向が明かとなった. 3.約100個の岩石資料について,全岩化学分析,微量成分分析を実施した.その結果,玄武岩類はいずれも海嶺玄武岩としての性質をもっていること,しかし,岩体毎に多少の違いが認められ,同一マグマからの単純な結晶分化作用では説明できないことも明かになった.なお,謝金は分析資料の準備と化学分析の際の補助に対して用いた. 4.すでに野外調査と全岩分析がかなり進行していた下川岩体に関しては,全岩分析・微量成分分析を追加して実施するとともに,EPMAによる鉱物分析を実施しつつある.本岩体は,日高帯一四万十帯を通じて最大の岩体で,現地性緑色岩体の典型であり,世界的にも重要な意義があると思われる.現在論文化を始めているところである. 5.購入したコンピュ-タ-一式は,上記の化学分析の際の様々なデ-タ-処理・図表の作成を始め,論文作成にもおおいに役立っている.
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