研究概要 |
日本海沿岸地域に分布している第三紀の酸性火成岩類及び関連する塩基性〜中性火成岩類を採取し、希土類元素などの微量元素存在度、Sr同位体比及び一部についてはRb-Sr法による年代の測定を行った。本研究で着目した点は、約15Ma前に起こったとされる日本海の拡大以降の酸性岩類と白亜紀酸性岩類も含めてそれ以前のものでは、どの様な相違が観察されるかと言う点であった。兵庫県・京都府北部地域の結果をまとめると次のようであるが、福井県西部の結果もこれと矛盾するものではない。試料の年代は、62Ma前後、43Ma、17〜13Ma,5〜3Maにわたる。酸性岩類のSr初生同位体比はそれぞれ0.7073〜0.7080、0.7058、0.7070〜0.7091、0.7058〜0.7076であり、これらは隣接地域の白亜紀酸性岩類のSr同位体初生比(兵庫県0.707〜0.708;鳥取県東部0.7054〜0.7066;京都府以東の地域0.708〜0.710)と明瞭な差があるとは認められない。また、酸性岩類と中性から塩基性岩類との差も明瞭でない。しかも、第四紀の玄武岩類にも比較的高い同位体比が知られている(0.7060〜0.7065)。希土類元素のパターンは、酸性岩類についてはすべて、軽希土に富むが、Eu異常の程度は様々である(ほとんど異常を示さないものもいくつか存在している)。この様な小さなEu異常は、その形成過程で長石がほとんど関与していないことを示唆している。重要なことは、日本海の開裂以前と以後では、Sr同位体比及び微量元素存在度については、大きな差はなく、しかも塩基性岩と酸性岩の差もほとんどないことが明らかになった。これらの観察事実から、酸性岩類の同位体比はマントルの値を反映しており、西南日本の回転にともなって最上部マントルも地殻と共に回転したと考えられる。今後の課題としては、マントル交代作用の影響に関する検討が重要であろう。
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