研究概要 |
平成2年度は中国・九州に点在する三郡変成岩のなかで,東より若桜地域,久世地域,徳山地域,三隅地域,久留米地域および長崎地域において地質調査を行い,小構造を解析した.その結果,次のような知見が得られた. 1.柴田・西村(1989)は放射年代の差異より三郡変成岩を三郡一蓮華帯(約300Ma),周防地帯(約220Ma)および智頭地帯(約180Ma)に区分している.智頭地帯には若桜地域,久世地域,三隅地域が含まれるが,これらの地域では小構造の違いから二種類の変成岩が分布している.一つは三郡変成岩プロパ-と呼べるもので,この岩石中には片理面と2方向のちりめんじわへき開が普遍的に発達している.他の一つは低変成作用を受けた岩石であり,この岩石中にはスレ-トへき開とこれを曲げる1方向のちりめんじわへき開がみられる.後者の岩石としては若桜地域のジュラ系角谷層,智頭層,久世地域の智頭相当層および三隅地域に分布する三隅層群が相当する.両者の大きな違いは再結晶作用が前者で2回,後者で1回起きていることである.従って,約180Maの放射年代は三郡変成作用の時期を示すのではなく,三郡変成作用の後に起きた再結晶作用を伴う弱い変成作用の時期を示す可能性が大きい.2.徳山地域,久留米地域では,既に報告した落合地域(Oho,1988,1989)と同じように小構造の上からも重複変形が確認できた.変形様式でみると、最初に片理面を伴う流れ褶曲が形成され,その後2回ちりめんじわへき開褶曲が形成された.これらの地域で最もよくみられる面構造は片理面ではなく,2回目の変形に伴うちりめんじわへき開である.3.長崎地域では,二つの異なる褶曲軸をもつ等斜褶曲とこれらを曲げるちりめんじわへき開褶曲とが観察された.しかしながら,これらの褶曲と久留米以東でみられる褶曲との対応関係については今後の課題である.
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