研究概要 |
西南日本内帯西部域の後期新生界(段丘形成以前)は層準の上から,鮮新-下部更新経(層準PLPと呼ぶ)と中部更新経(層準MPと呼ぶ)に大別される。層準PLPの一部,都野津層群が内湾相をはさむ以外はすべて内陸の河川堆積層からなる。最も北側の日本海沿岸に分布する都野津層群の都野津層中に含まれる内湾相は,花粉分析の結果によれば,それと互層する河川相よりも温暖な気候下で形成されたものが大部分であり,日本海沿岸域での堆積相が水河性海水準変動の影響を強く受けて決定されたものであることを示唆している。このことは,現在不明確である約4Ma-1Maの海水準変動の実態把握の問題に対して重要なデータを提供する。層準PLPの,他の諸層は扇状地堆積相(一部),網状河川堆積堆積相(大部分),蛇行河川堆積相(一部)の,垂直的にも水平的にも変化性の著しい河川相からなるが,最上部の諸層にくらべては相対的ディスタルな河川環境下で形成されている。一方,最上部の堆積相は扇状地堆積相を主とし,よりプロクシマルな環境下の堆積相である。日本海沿岸域では,この傍界は,都野津層とその上位の島の星層との間の広域不整合(1-Ma不整合と呼ぶ)で代表され,その時間間隔に「1-Ma江津地震」が発生した。この1-Ma不整合は,中央構造線北側の三豊層群中にも存在するほか,ほぼ同時期に,中央構造線沿いの土柱層中に大現模な岩盤地辷が発生し,「1-Ma変動」とも呼ぶべき地殻変動が約100万年前に西南日本内帯西部域を通じて広く行われたものと考えられる。これを境いとして山地は急速に上昇し,最上河のプロクシマルな堆積相が形成された。層準MPの諸層は,西条層等によって代表されるように,内帯西部域に特徴的なNE-SW性の断層群の活動に密接に伴って形成された水堆積盆中に形成された河川堆積相である。以上のように,後期新生界の堆積相は,一部では水河性海水準変動,一部ではテクトニックな影響下で形成されている。
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