本年度は、神戸市北方三田盆地の神戸層群、近畿北部の北但層群、四国南部の四万十帯、ならびに亀の瀬地すべりを主に調査した。前年度及び従来の成果の精度をあげるため、空中写真の判読とともに画像解析を試みて斜面変動と地形・地質資料のデ-タベ-ス化を図り、これらの特性から斜面変動と基岩の岩相・構造との相互関係の解析を実施した。 神戸市北方の三田盆地の神戸層群分布域は、近畿有数の斜面変動地帯であるが、近年、この地域で大規模な住宅地の開発や高速道の建設がなされ、しばしば斜面変動が発生してその対策に苦慮している。この地域の緩斜面は水田に利用されていることもあり、斜面変動ならびにその活動度の判定は容易ではなく、空中写真の判読とともに現地での地形・地質調査が必要で、これにより地盤の安定性の評価と基盤岩体の岩相・地質構造の特性解析を試みた。大部分の斜面変動は泥岩・細粒凝灰岩などの岩相部で斜面変動は多発するとともに、地層面の傾斜方向に滑動する流れ盤構造が卓越しており、基盤岩体との関係が明確であった。しかし、一見安定とみられる粗粒砂岩・磔岩から成る小起伏山地の一部には、規模の大きい旧斜面変動地塊の存在が確認され、このような場所で大規模土工を実施すると斜面変動を再開し、大きな被害を与える。このような斜面変動地塊の判定は難しいが、稜線沿いにしばしば小凹地があり、周辺地域の岩相がわずかながら乱れていることから、いくつかの斜面で旧斜面変動地塊を見いだした。 亀の瀬地すべりは従来から研究していたが、この地すべり変動体の内部構造に関する多くの資料に基づき、その基盤岩体の岩相・地質構造の相互関係を再確認した。これにより、斜面変動の発生に共通する地形・地質環境条件をほぼ確定しえた。
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