本研究の調査モデル地として、近畿中部・北部の神戸層祥・北但層祥、四国南部の四万十帯を主体とした。従来の成果の精度をあげるため、空中写真の判読とともに画像解析を試みて斜面変動と地形・地質資料のデ-タベ-ス化を図り、とくに斜面変動と基岩の岩相・構造との相互関係の特性の解析を実施した。斜面変動発生に共通の地形・地質特性は下記のようである。これを諸種の地質体に適用すれば基盤岩体の岩相・構造の解析がより容易に可能となる。 (1)基盤岩体の如何にかかわらず、比較的規模の大きい斜面変動は泥岩・細粒凝灰岩を主とした細粒砕屑岩に発生する。これに対して小規模の斜面変動は岩相を選ばず、花こう岩や砂岩など粗粒の岩体にも多発する。(2)斜面変動体は主として岩屑崩土からなり、旧来の斜面変動体の再活動であるが、近年の大規模開発工事ーとくに斜面を切土する長大法面は岩盤自体の変動の発生を促進させている。(3)基岩が新第三系に発生する斜面変動のすべり面はモンモリロナイトの含有率が高い。(4)すべり面の形成には地下水が多大に関与する。(5)斜面変動の発生し易い斜面の傾料は、第三系で10ー15°、先白亜系では20ー30°であり、これは地質条件に規制される。(6)稜線部の小凹地などいわゆる二重山稜地形が認められると、大規模な斜面変動の発生に関連し易い。(7)いずれの地質体に発生する斜面変動も構造的には流れ盤タイプが多い。(8)斜面変動と断層との直接の関係は必ずしも一律にいえないが、広域にわたる岩盤の破砕など断層運動の影響を指摘できる。(9)稜線部の平坦面の存在と風化層の発達は第四紀の山地形成をもたらし構造運動に大きく関与している。(10)緩傾料をなす斜面変動地帯は、水田・畑地などの土地利用が顕著である。
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