研究概要 |
現在の親潮系貝類相の成立過程を探るため,北太平洋高緯度海域に分布する種属の地理的(緯度的)分布パタ-ンについて,パソコンによるデ-タベ-スづくりを通じて把握しつつある。また,これと平行して,新生代における寒冷系貝類の時間的・空間的出現過程を化石記録を中心に整理している。これらの作業で新生代における中〜高緯度地域での貝類の主要な種属の消長が把握され,それぞれの種属グル-プによって,その出現や分布パタ-ンに特異性があることが判明した。特に注目されるのはホタテガイ類のMizuhopecten,Chlamys,Swiftopecten属などで,さらにSerripes,Clinocardium,Peronidia,Neogenella,Astarte,Tridonta属などの二枚貝,Neptunea,Buccinum属などの巻貝類である。本研究ではこれらの諸属の種分化パタ-ンを解明してゆくことが今後の中心的課題となる。現時点で,この種分化など変革が生じた年代は15〜13Ma,5〜3Ma頃などに集中して認められることが判明しつつあるが,更に細かく年代的・地理的な化石記録の検討を進め,同時にこの間の古海浄環境を解明し,種分化が生じた環境的背景をより鮮明にする必要がある。 北方系貝類群の年代的変遷をより具体的に検討するため,その一つの基準地域として,北海道天北地域の第三系層序の再検討を行いつつある。今年度は特に歌登町地域の中新統タチカラウシナイ層及び羽幌〜築別地域の下部〜中部中新統について野外調査と資料採集に努めた。これらの資料は現在整理中で,従来の知見を大幅に修正すべきデ-タが集まりつつある。
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