研究概要 |
今年度は,西日本の第四紀哺乳動物化石産地から得た堆積物を水洗処理し,食虫類化石を新たに数百点抽出した。これらの化石を分類学的研究に使えるように整理し,大まかな分類を行なった。これらの標本に,これまでに整理の終っている化石標本を合わせると2000点以上の標本が研究可能な状態になった。これらの標本の予察的な研究の結果,その中には少なくとも11種類の食虫類(Sorex shinto,Crocidura dsinezumi,C.sp.,Chimarrogale platycephala,Anourosorex japonicus,Shikamainosorex densicingulata,Dymecodon pilirostris,Urotrichus talpoides,Euroscaptor mizura,Mogera sp.A.,M.sp.B)が含まれていることが明らかになった。これらの化石の系統分類学的な記載を行なうためには,現生食虫類の骨格や歯牙についての形態学的な研究が必要であるが,今年度はそれに用いる現生標本の採集を行ない,新たに数十点の標本を得ることができた。これらの標本は骨格標本にして今後の研究に役立つように保存している。今年度は本研究の初年度ということもあって,まだ十分な成果は上っていないが,上記の種類のうち,絶滅種(Crocidura sp.,Anourosorex japonicus,Shikamainosotrex densicingulata)のおおよその絶滅時期が明らかになってきたこと,Sorex shintoやDymecodon pilirostrisなど現在本州の高山に生息する種類の増減が気候変動と対応している可能性があることや上記の種類の中に分類学上問題のある種類が多いことが明らかになったことなどの成果が上ったと言える。来年度はこのような点をさらに追求するとともに,大陸の近縁種との関係も吟味してみたいと考えている。
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