研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き,本州中部以西の地域の第四紀哺乳動物化石産地の調査を行なった.その際に採集した堆積物や昨年度以前に採集した堆積物を昨年度に引き続いて水洗処理し,今年度新たに約1000点の食虫類化石を得ることができた.これらの化石は,すぐに系統・分類学的研究に使えるよう分類・整理して保管している.日本では,食虫類化石を含め小型哺乳動物化石の採集法や整理・保管法についてまとめた文献がこれまでほとんどなかったので,今年度は筆者がこれまでの経験をもとに開発した方法を論文にまとめておいた(哺乳類科学掲載予定).また,食虫類化石の系統・分類学的研究を行なう際に必要な歯牙の詳細な記載用語と計測法のうち,前者については日本産食虫類に適した用語を考えて論文にまとめた(愛知教育大研報Vol.40掲載).計測法についても,化石および現生標本を詳しく観察して合理的な方法を考え,論文化をめざしている.食虫類化石の研究を行なう上で必要な現生食虫類の採集も昨年度に引き続いて行ない,新たな標本を得ることができた.このほか,今年度は食虫類化石の研究成果も含めて日本列島の第四紀哺乳動物相の変遷史をいくつかの論文にまとめておいた(第四紀研究Vol.30,31;科学Vol.62掲載). 以上のような研究成果にもとづいて,来年度はこれまでの日本産第四紀食虫類化石の系統・分類学的研究を総括し,モノグラフの完成をめざしたいと考えている.
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