研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き,国内各地の第四紀哺乳動物化石産地の調査を実施し,採集した堆積物を水洗処理して,その中から化石標本を抽出した。また,化石標本との比較に必要な現生食虫類を国内各地で採集し,それらの骨格標本を多数作成した。これらの標本や昨年度までに採集した標本にもとづいて,日本産第四紀食虫類化石の系統・分類学的な記載を行なった。化石の記載にあたっては,食虫類の歯の記載用語や計測法が不可欠になるので,昨年度はそのうちの記載用語を論文にまとめた(昨年度実績報告書参照)。本年度は残る計測法についての論文を完成させた(愛知教育大学研究報告,vol.42掲載)。これまでに採集し,整理・保管している食虫類化石は厖大な数にのぼるので,それらについてのモノグラフはまだ完成していないが,これまでに得られた研究成果は平成4年8月〜9月に京都市で開催された万国地質学会議で“Quaternary insectivore faunas in the Japanese Islands"と題して発表した。 そのほか,今年度新たに得られた成果としては,来日中の中国人研究者が持参した多数の中国産第四紀食虫類化石を詳しく観察し,日本産のものと比較した結果,中国の前期更新世の食虫類化石の中に日本のものと類縁関係の深いものや,日本の固有属・固有種の起源を考える上で重要なものが含まれていることが明らかになった。今後完成をめざす日本産第四紀食虫類化石のモノグラフの中に,そのような新しい成果にもとづく日本と中国の食虫類動物相の関連についての論議も含めたいと考えている。
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