研究概要 |
石垣島米原沖卓礁にみられる枝状造礁サンゴの一種Acropora sp,の大形群体の根元には、ほとんど常にRhizoolamellia属の一種が生育していることがわかった。石西礁湖内でも予察的にサンゴモ植物相の調査を行い、Lithophyllum moluccenseを優占種とする群集が存在することを確認したが、個体数はきわめて小さかった。現在の石西礁湖の群集はオニヒトデ禍からの回復過程にあり、本来の群集のようすと考えるべきではないと思われる。 沖縄島近海陸棚のサンゴモ球上に生育するLithothamnium属の枝状種には、外見が酷似していながら、栄養組織内に残存する生殖巣窩にcavity cellが見られるものと見られないものの2種がある。このcavity cellは石灰化していて、その有無は遺骸個体(submarine cementationをあまり被っていないもの)でも、枝の破断面を走査電子顕微鏡で観察することにより、容易に確認することができる。研磨薄片観察の結果、この2種ともサンゴモ球内部の遺骸としても出現することが明かとなった。サンゴモは一般に識別が困難とされているが、この2種は、外観と組織が特徴的であるため、他の種と比べて同定しやすく、今後広範囲にその出現を確認していくことが容易であろうとおもわれる。その結果、更新統琉球石灰岩に関する確実な古水深指標となり得ると期待される。 サンゴモ球の内部の遺骸群集には、Lithoporella属の一種が頻繁に出現する。これは、表層と基層のみよりなる薄い藻体の種であるが、あるサンゴモ球では、藻体が多数重なり、約2cmもの厚さに達することが観察され、サンゴモ球の成長に大きく関与していることが明らかになった。今回、遺骸個体の生殖巣窩が得られ、この種をLithoporella melobesioidesと同定した。
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