研究概要 |
白亜紀Cenomanian/Turonian両期境界に海洋無酸素事変の存在した事が北西太平洋以外の地域で凡地球的に認められる事が知られていたが,北西太平洋地域でも認められる事を平野ほか(1991)で初めて明らかにした.この研究では岩相・大型化石相・大型化石層序・生痕相・K‐Ar放射年代に加えて泥岩中の硫化物態硫黄の定量により還元環境を確認した.本年はこれらのアプローチのうちの硫黄の定量について,分析糖度の確かさ及び他の層準での含有率との比較による硫黄をメルクマールとする事の適切さを検討した.結果は極めて良好で,XRFによる定量の再現性は申し分無く信用できる事が分かった.また,C/T境界の上下の層準における硫黄の定量結果では,C/T境界におけるピークに比べると1桁または2桁低い含有率で有意に低い事が分かった.またC/T境界部の黒色頁岩の堆積速度が上下の層準のおよそ6分の1という試算から,この層準における硫黄の濃集はこの遅い堆積速度のためであるという意見があった.しかし,濃集部はそうでない層準より1桁または2桁濃集しているので,そのような問題は払拭された.すなわち,硫黄の定量による無酸素状態の復元はあらゆる見地からその合理性を得た事になった.
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