研究概要 |
日高変成帯南部地域の分帯を行い,6つの帯を認めた。温度が上昇する順序に、A帯(緑泥石帯)、B帯(菫青石ー白雲母帯)、C帯(菫青石ーカリ長石帯)、D帯(珪線石ーカリ長石帯)、E帯(ざくろ石ー菫青石ーカリ長石帯)およびF帯(斜方輝石ー菫青石ーカリ長石帯)である。これらの帯の温度・圧力条件は、鉱物組合せや地質温度・圧力計から、A帯が450ー550℃、2ー2.5Kbar、B帯が550ー600℃、2.5ー3Kbar、C帯が600ー650℃、2.5ー3Kbar、D帯が650ー750℃、3ー4Kbar、E帯が750ー800℃、4ー4.5Kbar、およびF帯が800ー900℃、4.5ー5Kbarである。また、変成帯上昇期の温度ー圧力径路も追路でき、緑色片岩相から沸石相にわたる下降変成作用が起こったことも明かとなった。さらに、本地域に分布するほとんどの岩石型について、51試料を用いKーAr年代測定を行った。この結果により、本地域は大きく三つのステ-ジに分けられる。すなわち、累進変成作用のステ-ジ(80ー40Ma)、ト-ナル岩ー高温変成岩ブロックの上昇・定置(35Maごろ)および変成帯全体の衝上運動のステ-ジ(18Maごろ)である。これらのデ-タにより、変成帯形成の温度ー圧力ー時間径路が定量的に議論できるようになった。流体組成の時間による変化については、下降変成作用時に形成された細脈の鉱物組合せの変化から,温度の下降にともない,流体のMgやCaの活動度が低下し,NaやKのそれらが上昇することが明らかとなった。また、温度の下降にともない、細脈の形成頻度も低下することもわかった。 以上の定量的なデ-タを境界条件として用いることについて,累進変成作用時の流体の挙動やその組成変化によっても,より正確な議論ができるようになった。
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