研究概要 |
平成3年度は、冷却ー加熱ステ-ジを用いて、岩石中の流体包有物の均質化および融解温度を測定し、流体の密度や塩分濃度を調べた。流体組成を決定するために用いた試料は、A帯(緑泥石ー白雲母ー黒雲母帯)からC帯(菫青石ーカリ長石帯)の黒雲母ホルンフェルス各1試料,D帯(珪線石ーカリ長石帯)の黒雲母片麻岩3試料、E帯(菫青石ーザクロ石ーカリ長石帯)の黒雲母片麻岩3試料、F帯(斜方輝石ー菫青石帯)のグラニュライト1試料、C'帯(ファイブロライトーカリ長石帯)の黒雲母片岩3試料、菫青石ト-ナル岩3試料、および黒雲母ト-ナル岩3試料の計19試料である。以下にその結果を述べる。 これら岩石中の流体包有物は、石英・斜長石とも、一般に1ミクロン前後、最大長径20ー10ミクロン程度である。それらの内、均質化および融解温度が測定できた物は総て水に富む流体であった。また、同一試料中の石英と斜長石とでは、これら温度に差異は認められなかった。各帯の岩石の均質化温度(℃)は次の通りである:A帯(126ー163,平均143)、B帯(113ー152,平均135)、C帯(129ー167,平均142)、D帯(105ー283,平均176)、E帯(128ー198,平均167)、F帯(147)およびC'帯(128ー147,平均140)。これらから推定した流体の密度は0.95から0.75g/cm^3となる。一方、融解温度(℃)およびそれから垂定したNaCl含量(重量%)は次の通りである:A帯(-1.6ー-9.1,平均-4.7,7.2)、B帯(-7.1ー-15.4,平均-9.1,12.9)、C帯(-3.2ー-16.6,平均-7.8,10.8)、D帯(-0.8ー-16.6,平均-5.6,7.6),E帯(-1.8ー-5.1,平均-3.6,5.8)、F帯(-5.4)、およびC'帯(-3.5ー-19.0,平均-9.4,12.7)。一般に低変成度の岩石ほど、高いNaCl濃度を持っている。これら流体包有物は主に、下降変成作用時(温度条件100ー400℃)に形成されたと考えられる。
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