本研究は、東北日本弧、森吉火山帯および鳥海火山帯に産する火山岩に関し、各火山海、システマティックな試料調達により数個ないし20個程度づつの代表的試料を選び、プラズマ発光分光分析法による希土類元素の定量を行う事を一つの主な作業としている。この結果と那須火山帯構成火山岩のデ-タとを比較検討することによって各火山ないしは各火山帯毎の希土類元素組成上の特徴を明確にし、(1)東北日本弧第四紀の島弧マグマの希土類元素組成に関する(島弧横断方向の)「水平変化」をキャラクタライズする事、および(2)こうして新たに求めたマグマの成因に関する束縛条件を加えたもとで、マグマ生成モデルを構築、提唱することを目的としている。 平成2年度は化学分析に供する岩石試料の調達と分析装置の整備を中心に作業を行った。平成3年度は前年度に入手した試料の処理、化学分析を行うことを主な作業とした。更に、火山フロント近くで、カルクアルカリマグマのみを噴出した吾妻、栗駒両火山の試料も新たに採取した。なお、平成3年現在での成果のうち、ややまとまった部分は地球惑星科学関連学会共通セッションシンポジウム「希土類元素の挙動からみた地球・惑星系」において招待講演を行った。更に、その一部はGeochemical Journal特集号に投稿、受理され印刷に回されている。 一方、本研究目的達成のためには、東北日本弧とき異なり、単純にプレ-ト沈み込みのみが行われている火山弧と比較対照する事がきわめて重要であることが明白となり、インドネシアSangihe弧の火山岩の提供を受け希土類元素の特性を明らかにすることとした。この結果を検討すれば前述した東北日本のマグマ水平変化の特性を生み出す2要因、即ち(1)沈み込みプレ-トからの物質供給と(2)背弧拡大によるマントル物質の湧き出しの影響に関して地球化学的解明が可能となるはずであり、正に一石二鳥となる事が期待される。
|