研究概要 |
高温高圧下におけるオリビン,スピネル中の元素の相互拡散速度の決定のため,出発物質の合成実験とMA8型高温高圧発生装置を用いた拡散実験を行なった。拡散実験に用いる出発物質としてチョクラルスキ-法により数cmのマグネシウムオリビン単結晶と浮遊帯域溶融法により鉄コバルトオリビン,さらにフラックス法によりニッケルオリビンを合成した。いずれも均一で良質な単結晶を得ることができた。拡散実験はグラファイト容器中において1.5×1.5×0.5mmの大きさのマグネシウムオリビンとこれを取り囲むようにして入れた細粒の鉄,コバルト,ニッケルオリビンとの間で陽イオンの相互拡散を行なわせることにした。高温高圧実験は東京大学地震研究所所有のMA8型装置を用いて圧力:5ー10GPa,温度:1400ー1600℃の状態に1ー4時間保持することにより拡散アニ-ルを行なった。回収試料から研磨薄片を作成し,光学顕微鏡とエネルギ-分散型X線分析装置の付いた走査型電子顕微鏡により観察した。8GPaの圧力をかけた実験においては1600℃でマグネシウムオリビンと鉄オリビンの混合物が試料容器内でほぼ完全に融解しているのに対してマグネシウムオリビンとコバルトオリビンの混合物は試料容器内の高温部分にあたる約40%が融解を起こしていた。同じ8GPaの実験でも温度を1450℃に保持した場合,マグネシウムと鉄オリビンで高温部の20%,マグネシウムとコバルトオリビンではわずか2%が融解を起こしていた。現在、研磨薄片をマイクロプロ-ブで分析し,相互拡散の進行度の測定を行なっている。これからさらに高い圧力下における実験を行ない,拡散の活性化体積をより精度よく求めたいと考えている。
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